ると渦巻いて、眩《まぶ》しく沈みかけていた。

 その時地面のドン底の、彼《か》の石男の亡骸《なきがら》の、
 数限りない毛穴から、何億万とも数知れぬ、
 大きい小さい様々の、石の卵が湧き出して、
 暖かい日に照らされて、一ツ一ツにかえり出す。

 足から出たのは艸《くさ》や木に、胴から出たのは虫けらに、
 手から出たのは鳥獣《とりけもの》、水に沈めば魚《うお》くずに、
 又頭から湧いたのは、数限りない人間に、
 われて這い出て世の中に、今の通りに散らばって、
 一ツの国が出来上り、藍丸という名が付いた。

 扨《さて》その中に只一つ、臍《へそ》の中から湧き出した、
 小さい白い一粒は、気高い尊い御姿の、
 若いお方に抜けかわり、藍丸国の王様の、
 位に即《つ》いてそのままに、何千何万何億と、
 数限りない年月《としつき》を、無事に治めておわします。

 この藍丸の国のうち、津々浦々に到るまで、
 皆正直に働いて、この珍しい長生《ながいき》の、
 王に忠義を尽《つく》す故、王はおいでになりながら、
 広い国中何一つ、御気にかかった事もなく、
 いつも御殿の奥深く、銀の寝台《ねだい》に身
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