振り子の附かない木の鈴が、地面の上に転がった。

 こうして我れと吾が身をば、咀《のろ》い尽《つく》した大男、
 息は忽《たちま》ち絶え果てて、石の野原に打ちたおれ、
 手足も頭もバラバラに、胴と離れて転がった。

 折しも四方に雲が湧き、雷が鳴り風が吹き、
 月日の光りも真暗に、砂や小石を吹き上げて、
 車軸を流す大雨を、泥や小砂利の滝にして、
 彼《か》の大男の亡骸《なきがら》も、埋もるばかりにふりかけた。

 その時海も野も山も、砕くるばかりに鳴り渡る、
 さも物凄い恐ろしい、真暗闇のただ中に、
 彼《か》の石男の眉間《みけん》から、赤い光りが輝やいて、
 額の骨が真二《まっぷた》ツに、パッと割れたと思ううち、
 真赤な鸚鵡が飛び出して、東の方へ飛んで行《っ》た。

 又石男の胸からは、青い光りが輝やいて、
 身に宝石の鱗《うろこ》着た、細い海蛇《かいだ》を巻き付けた、
 大きな鏡が現われて、南の方へ飛んで行《っ》た。

 やがて空には雲が晴れ、地には嵐が吹き止んで、
 泥の野原に泥の山、濁った海のその他は、
 何にも見えぬその涯《はて》に、真赤な真赤な太陽が、
 ぐるぐるぐ
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