、
淋しさつらさ情なさ。男はとうとう焦《じ》れ出して、
一体誰がこの俺を、こんな野原に生み出した。
一体誰がこの俺を、こんな荒野《あれの》に連れて来た。
寧《いっ》そ眠っているならば、死ぬまで眠っているならば、
こんな淋しい情ない、つらい思いはしまいもの。
一体誰がこの俺を、ドシンとなぐって起したと、
ぬっくとばかり立ち上り、声を限りに怒鳴《どな》ったが、
答えるものは山彦の、野末に渡る声ばかり。
青い空には雲が湧く。けれども自分は只一人。
黒い海には波が立つ。けれども自分は只一人。
男はとうとう怒り出し、吾れと吾が髪引掴み、
赤く血走る眼を挙げて、遠い青空|睨《にら》みつつ、
大声揚げて泣きながら、天も響《ひび》けと罵《ののし》った。
大空も聞け土も聞け、山も野も聞け海も聞け。
目に見えるもの見えぬ者、あらゆる者よ皆《みんな》聞け。
俺は死ぬのだ今直ぐに、この場で死んで了《しま》うのだ。
われと自分の淋しさに、天地を怨《うら》んで死ぬるのだ。
こんな淋しい恐ろしい、所に長く生きていて、
悲しい思いするよりは、死んでしまった方が好い。
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