通りに御殿中の大勢の役人共が集まっておりました。
 その役人共は青眼先生が眼を覚ますのを見るや否や、皆一時に手を挙げ頭《かしら》を下げて――
「総理大臣公爵青眼閣下。御祝いを申し上げます」
 と口々に申しました。これを見た先生は呆気に取られてしまって、どこからが夢で又どこからが本当なのか、いくら考えてもわかりませんでした。そうしてこれはあまりいろいろの心配をするために、気持ちが変になっているのではあるまいかと思いました。けれども斯様《かよう》に役人が大勢集まって、口々にお祝いの言葉を云うところを見ると、自分がこの国の総理大臣になった事だけは、どう考えても本当で、疑う事が出来ませんでした。

     二十五 止まらぬ花馬車

 一方、気が狂った紅木大臣は、濃紅《こべに》姫の死骸を荷《かつ》いだまま、一息に廊下をかけ抜けて、馬にも乗らず真一文字に、自分の家《うち》に帰り着きました。そうして門を這入るや否や、玄関の横に置いてあった昨日《きのう》の花馬車の中に、濃紅姫の死骸を外套に包んだまま放り込んで、それから廏へ行って名馬の「瞬」を引き出して、自身に馬車に結び付けると、いきなり鞭をふり上げ
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