の家の娘です』と叫ぶ間もなく、青眼先生から毒薬を注ぎかけられてたおれました時、妾は自分の身体《からだ》の血が凍ったように思って、心も身体《からだ》も一所に消え失せたと思いました。けれども間もなく又ふっと気が付きますと、不思議やその時妾の心は、今までとすっかり違って、世にも恐ろしい女の心と入れかわっておりました。妾はその時から今朝《けさ》まで、美紅姫でも何でもない――多留美という湖の近くに住む、藻取という者の娘で、美留藻《みるも》という女――美紅姫と同じように夢の中で美留女姫となって、白髪小僧と一所に銀杏の葉に書いた石神のお話を読んだ女――湖の底に鏡を取りに行ったまま、行衛《ゆくえ》知れずになった女そのままの美留藻になっておりました。そしてそれと一所に、妾はたった今まで美紅姫であった事を忘れてしまって、貴方が美紅姫の死骸を残して、窓から出てお出でになると直ぐに、戸棚の扉を開いて外に出まして、眼の前の寝台の上に横たわっている、美紅姫の氷の死骸を見ると、思わず莞爾《にっこり》と笑いました。そして先ずこれで美紅は死んだ。あとは明日《あす》のお眼見得の式で濃紅姫に勝ちさえすれば、妾は間違いなく女
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