美紅姫では御座いませんでした」
「エ。エ。エ」
と青眼先生はよろよろとあと退《しざ》りをして、屹《きっ》と身構えをして女王の顔を穴の明く程見詰めました――
「女王様。貴女は本当に気がお狂い遊ばしたので御座いますか」
「イエイエ。少しも狂いませぬ。又嘘も申しませぬ。妾こそ悪魔で御座いました。美紅姫にそっくりそのままの姿をした悪魔で御座いました」
「ウーム」
と青眼先生が両方の手を石のように握り固めながら、女王の顔を睨み詰めますと、室《へや》の外の紅木大臣も、思わず刀の柄に手をかけて身構えました。けれども女王は騒ぎませんでした。落ち付いて床の上に座ったまま、青眼先生の顔を仰いで話しを続けました――
「御疑いになるのも御尤《ごもっと》もで御座います。本当は妾もまだその時の疑いが晴れませぬ。ですからこのように打ち明けてお話しをするので御座います。本当の事を申しますと、妾はあの時貴方にあの毒薬を注ぎかけられて、氷になってしまった方が仕合わせで御座いました。なまじいに生き残ったために、妾は悪魔に魅入られた女になってしまいました。
あの時あの少女が悪魔と呼ばれて眼をさまして、『妾は美紅です。こ
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