濃紅姉様の身の上も……何だか……夢のような気がしていたので御座います。
 すると丁度そのお兄様がお怪我遊ばした日の事、妾は青眼先生がお出でになるという事を聞き、扉の隙間からソッと覗いていましたが、前をお通りになる先生の御姿を一目見るや否や、妾は扉をしっかり閉じると、そのまま気絶してしまいました。青眼先生は妾の思い通り、あの夢の中で、妾を悪魔だといって殺そうとしたお方で御座いましたから、もし見付かったらどうしようと思ったからで御座います。
 それからどれ程位の間気絶したままでいましたものか、不図気が付いて見ますと、時分は丁度真夜中で、妾はいつの間にか戸棚の中に突立っています。そうして戸棚の扉の鳥の形をした透《すか》し彫《ぼ》りが、丁度眼の前に見えます。
 妾は暫くの間は何事かわからずに、ぼんやりと鳥の透し彫りから洩れて来るラムプの光りを見詰めたまま突立っておりました。もしやこれはまだ本当に眼が醒めずに、夢を見ているのではないかと思いました。ですから妾はよく心を落ち付けて、眼をしっかりと見開いて、鳥の透し彫りから覗いて見ました。そうして室《へや》の中に灯《とぼ》れている丸|硝子《ガラス》の
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