んなものには眼もくれず、つかつかと奥へ進み入って、王様のお居間に参りましたが、そこには只玉座ばかりで王も女王もおいでになりませぬ。そうしてずっと向うの腰元の室《へや》から、思いがけない青眼先生の慌てた声で――
「女王様。お気を静かに。お気を静かに」
と云うのが聞こえましたから、扨《さて》はと思ってその方に急ぎました。
ところが腰元部屋の入り口に来て中を一眼見るや否や、紅木大臣は身体《からだ》中の筋が一時に硬《こ》わばって、そのまま床から生《は》えた石像のように突立ちながら、中の様子を睨み詰めました。
室《へや》の真中には綺麗な白木の寝台があって、その上には絹張りの雪洞《ぼんぼり》が釣るしてありました。寝台の上には死人があると見えて、白い布《きれ》が覆せてあり、寝台の四隅の足には四人の宮女と見える女が髪をふり乱して気絶したまま、グルグル巻きに縛り付けてあります。寝台の向うにこちら向きに椅子を置いて、腕を組んで、眼を閉じて座っているのは藍丸王で、寝台の前には青眼先生が突立って、両手をさし展《の》べています。そしてその手に縋《すが》って、青眼先生の顔を見上げている、女王の姿をした者の顔
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