俺《わし》に直ぐ来いと仰せられたか」
これを聞くと騎兵はキョトンと妙な顔をしました。
「イエ。女王様は濃紅という御名《おんな》では御座いませぬ」
「エエッ。ナ、何という」
騎兵は紅木大臣のこう云った声と見幕に驚いて震え上って了《しま》いました。そうして六尺にあまる大きな身体《からだ》をブルブルと戦《おのの》かせて返事も出来ずにいますと、紅木大臣はつかつかと玄関の石段を降りて来て騎兵の胸倉をぐっと掴みました――
「ナ、何という……御名《おな》だ」
「ウ……海の女王」
「どんなお方だ」
「美しい……お方」
「馬鹿者……それはわかっている。どんなお姿だ」
「紫の髪毛を垂らして」
「エエッ」
「銀の剣《つるぎ》と……コ、金剛石の……」
「何ッ」
「オ……男の着物を召して……」
「悪魔だッ……」
と叫びながら紅木大臣は、騎兵を突き飛ばして奥へ駈け込みました。そうして何事と驚く家の者には一言も云わず、剣を腰に吊るして外套を着て帽子を冠《かむ》るが早いか、廏《うまや》へ行って馬を引き出して鞍も置かずに飛び乗りますと、イキナリ馬の横腹を破れる程|蹴《けり》付けました。
馬は驚いて狂気《きちがい
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