その顔。その姿。それから寝台《ねだい》の左右に垂れた髪毛《かみのけ》の色から縮れ工合まで、あの夢の中で、自分の背中の銀杏の葉の袋を切り破った女の子に一分一厘違いないではありませぬか。
青眼先生は暫くの間は、あまりの不思議に呆気《あっけ》に取られて、茫然《ぼんやり》と少女の寝顔に見とれておりましたが、やがてほっと大きな溜息をつきますと、何やらぐっとうなずきまして、震える手で窓をそっと押して見ますと、訳もなくスーッと左右に開きました。そこからそろそろと音を立てぬように中に這い込んだ青眼先生は、床の上に下りると直ぐに、毒薬の瓶の口を切って右手に持って身構えをして、丸|硝子《ガラス》の行燈《あんどん》の薄黄色い光りに照された少女の寝顔を又じっと見入りました。
見れば見る程美しい少女の姿。夕雲のように紫色に渦巻いた長い髪毛《かみのけ》。長い眉と長い睫毛《まつげ》。花のような唇。その眼や口を静かに閉じて、鼻息も聞こえぬ位静かに眠っている姿。見ているうちにあまり美しく艶《あで》やかで、何だかこの世の人間とは思われぬようになりました。けれどもなおよくあたりを見まわすと、その髪毛《かみのけ》の中や枕
前へ
次へ
全222ページ中159ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング