悪魔。悪魔」
 と繰り返して行きました。やがて自分の家《うち》の門の前に来ますと、青眼先生は立ち止まって、矢張り腕を組んだままじっと門の前の銀杏の樹を見上げました。
 銀杏の樹は最早すっかり葉が落ちてしまって、晴れ渡った大空に雲のように高く枝を拡げておりました。青眼先生は暫くその梢を見上げていましたが、やがて又眼を落してその根元を見ました。根元には黄色い葉がまだ腐らずに重なり合っています。そこをじっと見ていた青眼先生は、何か決心したらしく、独りで大きくうなずいて四方をグルリと見まわしましたが、人間は愚か猫一匹も通らない様子で、只前を流るる川の水音ばかりがサラサラと聞こえていました。この様子を見定めると青眼先生は又何かうなずいて、急いで門の中に這入って行きましたが、やがて又出て来たのを見ると、肩に一梃の鍬を荷《にな》えておりました。
 何を為《す》るのかと思うと先生は、又一度あたりの様子を見渡して、誰も通らないのを見澄まして銀杏の根方に立ち寄って、積った葉を掻き除《の》けると、切々《せつせつ》そこを掘り初めました。そして四五尺も掘ったと思うと、一枚の鉄の板が出て来ました。
 青眼先生がそ
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