お前の願いは今|叶《かな》った。
 新規の話しを聞きたいという。
 お前の願いは今叶った。
 行け行け、街に行け。
 たった独《ひと》りで街に行け。
 この広い街中で一番長く生きている。
 白髪《しらが》頭の人に聞け。
 不思議な姿の人に聞け。
 その人の身の上話しを……
 悧口な美留女姫。
 賢い美留女姫。
 疑うな、怪しむな、夢でない、本当だぞ。
 疑うな、怪しむな、夢でない、本当だぞ」
 美留女姫はこの時やっと吾《わ》れに帰って、夢から覚めたように思いながら、鸚鵡の言葉を一心に聞いていた。そうして心の中《うち》で、この不思議な鳥の言葉を、驚き怪しみながらも亦《また》、その云う事が決して偽《いつわ》りでも出鱈目《でたらめ》でも何でもなく、本当に珍らしい話しを聞くのに、一等都合の宜《よ》い巧《うま》い工夫を教えている事が解《わ》かって、心から感心した。成る程この街で、一番珍しい奇妙な風体《なり》をしている、一番|長生《ながいき》の白髪頭の老人を見付け出して、その人の身の上話しを聞かしてもらえば、屹度《きっと》面白い新規の話を聞く事が出来るに違いない。又|仮令《たとい》そんな人でな
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