ったと思うと、そのまま一足飛びに駈け出しました。
 けれども紅矢は「瞬」がどんなに驚いて、どんなに疾く駈けているのか気が付きませんでした。只最前の王の荒々しい言葉や声が、まだ聞こえるように思い、又家に帰ってこの事を濃紅姫に話す時の濃紅姫の顔が、今眼に見えるように思って、胸の内は掻き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》られるようでした。そうしてこのままこの馬と一所に高い崖からでも落ちて死ねばいいと思いながら、両手を手綱から放して、頭の毛を掻き掴んで、星の光りの冴《さ》え渡った空を仰ぎながら、馬の横腹を蹴立て蹴立てて、人通りの無くなった都の街を、滅茶苦茶に走らせました。
 すると馬は益々驚き慌てまして、白泡を噛み立髪を逆立てながら、足を空に揚げて王宮の周囲《まわり》を瞬く間に六七遍ぐるぐるとまわりましたが、七遍目に王城の前の広い通りへ出ますと、そのまま南の宇美足国へ通う街道を一散に駈け下りました。
 紅矢は馬が走れば走る程、気持ちがだんだん晴々《せいせい》して来るようですから、なおも構わずに走らせていますと、その中《うち》に夜が明け離れて、向うに遠く白く光るものが見えて来
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