ゆれば、東京の婦人の第二職業で、看護婦程恐ろしい度胸を要するものはないであろうという。
看護婦さんは自分の手にかけた患者が死ぬとお悔《くや》みに行かねばならぬ。お手当によっては会葬もせねばならぬ。それが当り前に手にかけて当り前に殺したのならば何でもないが、何でもあるのに平気で遺族の前に行って、平気で涙をこぼさねばならぬ。これが普通の第二職業婦人には滅多に必要のない芸当で、この点だけは如何なる阿婆摺《あばず》れでも看護婦さんの平気さに舌を捲くそうである。
知っていて損はあるまい。
真面目な職業婦人のグループの苦しみ
美容術師は看板や広告の意味で美人を仕込むので、特に上流向きに出来ている。しかし、有名なビルディングの美容術師の入口の大鏡の前に、絵のような美人がうつむいて腰をかけている姿を二三度見かけた。雑誌を読んでいたり、編み物をしていたりした。お湯屋の看板娘程度の意味か、それとも張り店式の意味のものかどうかは、考える人の考えようである。
こうした中を抜けつくぐりつ営業する真面目な職業婦人や、何々会なぞのやりにくさといったらないそうで、そんな不平は到る処耳に胼胝《たこ
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