こともあるそうである(この式で只口先だけでいくらと払わせるのも、ほかにいくらもある)。金を払うとすぐにその女給がテーブルに来るという(来ない処もあるが、チップ次第が多いと聞く)。

     奇妙な喫茶店

 以上述べたのは東京の目抜の処の一例であるが、それ以外の低級な処へ行くと、こんな心配も気兼ねもいらぬ。極めて平凡で乱雑である。
 大森、蒲田、その他東京の郊外、市内でも早稲田、下谷なぞのカフェーやバーに這入ると、真白なお化けが飛び付いて来る。椅子が無ければ、初めてのお客の膝の上にでもイキナリ腰をかけかねない。実に手軽い歓楽境である。
 神楽坂のような震災後の目抜の処でもこの流儀のがある。お客はビールと豆位でいつまでも騒いでいるが、流石に女は酒を飲ませぬ事になっている。殊に十二時キッチリに店を締めるから、場末のように見苦しい事はない。但、このような店は、単に十二時以後に於ける、店以外の商売の取引場と見てもいい位のものである。
 尚、特別の特別――かどうか知らぬが、記者の眼にそう見えたのがある。
 一軒しかないのだから処は挙げられぬが、浅草か銀座かと思って頂きたい。或る狭い横町のカフェ
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