白さったらないね。さもなくとも手堅い奴を口説き落して、何とかしてこちらに向かす。向いたら最後、こちらから引外《ひきはず》して逃げまわると、半玄人の悲しさには、青くなったり、赤くなったりして追っかけて来る。そんなのを二三人持っていると、大いに青春の慌しさを感ずるね」
乙「どうも驚いた。君にそんな手腕があろうとは……」
甲「何が君。芸者や女郎とはたちが違うもの。君にその手腕がないので不思議な位なもんだ」
乙「いよいよ呆れたね」
甲「何《な》んならお伴しようか。安値《やすね》で清潔なところを……」
乙「ウン……」
[#ここで字下げ終わり]

     堕落程度と相場

 職業婦人の堕落程度にはいろいろある。
 人間と名のつく以上、堕落の機会を持たぬものはないので、職業婦人は殊にその機会が各種各方面に多いが、ここには只売り物としての堕落方面を述べるに止める。
 芸妓《げいしゃ》はあまり有りふれているから略するとして、その次にありふれているのは女給、女案内人、稍《やや》高級なところではモデル女、女優一切であろう(女車掌の事は前に「新東京の裏面」の項で書いたから略する)。この種の職業婦人は、職業婦
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