を嘗《かつ》て見た最大の頭よりも見栄《みばえ》あらしめるために、一袋十銭のスキ毛を一ツ宛《ずつ》突込んで、遂に三十四十に及んだまでの事である。列強の大艦巨砲競争と似たような原因結果である事は疑われぬ。只、これを制限する華盛頓《ワシントン》会議がない代りに、讃美する新東京人があるだけ違う。だから彼女たちの頭の大きさの競争が、斃《たお》れて後《のち》止《や》むところまで行く。
丸ビル式と銀座髷
流石《さすが》に福岡あたりを歩いている新式の髷には、東京の職業婦人のそれのように非常識者なのは無い。これは、福岡の婦人に東京のような意味の職業婦人が少い、従って自己見せ付けの競争が東京程烈しく行われないからであるらしい。
しかしこの競争もある程度まで行くと、行き詰まりになるのは止むを得ない。そこで今度は恰好の競争が始まる。
その頭の恰好にも又いろいろある。記者が見たり聴いたりしただけでも新旧百幾通りもある。皆新聞や雑誌で宣伝されているから略するが、その中《うち》で有名な丸ビル式と銀座髷というのについて一寸《ちょっと》説明を加えておく。
丸ビルというのは東京で丸の内ビルディングの
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