いからわからぬが、これは流行《はや》っているにしても、福岡のように土着の人がやっているのではあるまいから、さまで驚くにも及ばぬであろう。
四五年このかた流行《はや》り始めた頭の結い方に、「ゆくえしらず」というのがある。今では通俗化して、一般の真面目な人――主として中年以上の婦人がやっておられるようであるが、髷《まげ》が無いために前髪や鬢《びん》をかなり思い切って膨らさねばならぬ。
東京の職業婦人の頭はここいらから発達したものであろうか。その形の思い切って大きいのが何よりも先に眼に付く。
頭髪の大きさの競争
職業婦人の頭といえば、直ぐに一抱えもある毛髪の集団《かたまり》を思い出す。日露戦争当時流行した二百三高地どころでない。五百三から八百三位まである。それへ櫛《くし》やピンの旗差し物が立てられて、白昼の往来をねって行く……と云ったら法螺《ほら》と云う人があるかも知れぬ。
法螺かも知れぬが、記者は間もなくそんな頭を見慣れてしまった。更にそれ以上の変妙不可思議な頭をいくつも見た。
尤《もっと》も彼女達は初めからこんな大きな頭をしていたのではない。
彼女たちは自分の頭
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