なものとなりはしまいかと憂慮される余地が十分にある。
同時に、それ等の無産階級の人々が目標とし、規準とする生活が、東京人の生活と同様の意味の文化生活を夢見るものであったならば、それ等の人々の覚醒と運動とは、将来に於て無価値のものとなり終るべき可能性を、充分に持っていはしまいかと疑い得られるのである。
口も筆も不調法な地方の若い人の自覚の力
さなきだに、毒々しい薄っぺらな都会の文化は全人類に飽かれつつある。反対に、ジミな、精神の籠もった地方色や、真剣な個性に依って作り上げられた農民文化が尊重される傾向が出来つつある。そうして、その個性や地方色を集めたものを民族性と名づけ、その民族性に依って荘厳された文化を人類文化と称える、そこに個性と人類性との共鳴があり、そこに民族の自由解放の真意義がある――というような説が次第に高まりつつある形勢である。
吾が大和民族は一民族を以て一国家を形成している。すくなくとも欧米各国のように雑然たるものでない。そこに吾が民族性の強みがあり、そこに吾国の地方色の真実味が生れ、そこに洗練された吾が国民の個性の貴重さと偉大さが表現されなければならぬ
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