。ABCの秘密ってんだよ」
「ウン。この鉛筆で書いたの、みんなそうかい」
「そうさ」
「驚いたな。君、書いたのかい」
「ウン。兄貴のを写したのさ」
「兄さんもきいたのかい」
「ウン、一緒さ。……いいかい。Aは第一の恋人《ラバー》、Bが第二の恋人《ラバー》、Cが第三の恋人《ラバー》なんだよ。大人だとA子は奥様で、B子だのC子だのといったらお妾さんの事さ。面白いだろう」
「ウン。もっと云って見給え」
「それからBだのPだのはお屁《なら》のこと、Cは女が小便《シッコ》をする事」
「ウフン」
「Dはウンコの事。Eは知らぬ顔をする事」
「何故?」
「何故だか知らないけれど、そうなんだっさ。それからFはお嬢さんの事。Gは芸者の事。Hは散歩をするとか、ハイカラとかいう意味。Iはお眼にかかりたいとか、承知しましたとかいうんだっさ」
「変じゃないか、それあ」
「なぜ?」
「Iってなあ自分のことじゃないか、英語で……」
「そうじゃない。『アイタイ』っていう『アイ』じゃないか」
「勝手にこしらえたんじゃないかい」
「僕がかい」
「そうじゃない。君に教えた英語の先生が、いい加減に教えたんじゃないかい」
「どう
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