に振舞う。ニッコリ位する……。
 ……応ずる…………。
 これを三日か四日位まで続けて、相手の学生が何となく自分の乗っている事を期待している風情に見えて来たら、ここで一日二日スッポカシを喰わせる。
 これを「手紙デー」、又は「デー」という。
 相手の少年が、「今日はあの女学生が乗らなかったな」と思っている矢先へ手紙が届く。
「女の癖にぶしつけなと思召《おぼしめ》すかも知れませんが、ほかにこの苦しみを洩らす道が一つもありませんから……」
「只愛する……というお言葉だけで妾は……」
「こんな事を申し上げましたからには、妾はもうあなたにお眼にかかられませぬ。お眼にかかれば、この悩みがいよいよ堪えられなくなるばかりで御座いますから……ああ神様……」
 とか何とか書いてある。
 本当にする少年は本当にする。そうしていろいろ悩み始める。
 こうしておいて、早いので二三日、長いので一二週間の後、如何にも偶然のように電車の中で逢う。但、少年の学校の帰りがけでなければならぬ。
 この時が成功不成功の分れ目だそうで、又一番|六ヶ《むずか》しい技巧を要するのだそうな。
 ……真赤になって、うつむいて、ハンケ
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