実は、今迄のは無論の事、これからの記事の中で最も甚だしい一つでも、平生の新聞の社会面に現われる記事のヒドサよりもヒドクないつもりである。
 しかし、それでも実を云うと、記者はこの記事の材料を集めつつある際に、これはとても書けないと思った事が屡々《しばしば》であった。到底、紳士淑女の前で公表出来ない事ばかりと云ってもよかった。そうして、それをこの程度にまで手加減して公表する迄には、幾度か考え直して後決心した事であった。
 この記事を忌み嫌われる方々は、今一度考え直して頂きたい。
 たとえば――。
 紳士淑女として口にすべからざる事も、口にする事を憚《はばか》るために、一般の人々が如何に堕落という事に対して無智識になっているか。如何に見当違いの警戒、筋違いの注意が施されているか。そうして、そのために如何に多数の不良少年少女が善良な家庭から出ているか。
 そうして、その原因を調べて見ると、その両親や監督の責任者が、堕落という事に対して無智識なためというのが大部分を占めている。
 如何なる理由で、如何なる順序で子女は堕落するか。又は、これから述べようとする事例、即ち不良少年少女の魔の爪は、如何
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