いるにきまっている。只、記者の心持ち――又は不良本人の意識だけで出来る区別である。そうして、要するにこの記事を読んで下さる人々の理解を助けるために、こうした区別を試みたに過ぎぬ事を含んでおいて頂きたい。

     八幡市の不良団に関する福岡県知事の質疑

 大正十二年の暮の事――。
 沢田福岡県知事から内務当局へ宛て一つの問合せを発した。その内容は今日迄発表されていないが、一時新聞に伝えられた八幡市の不良少年団に関したものであった。
 その意味は大略左の通りであった。
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大正十二年の十一月頃からの事、当福岡県下八幡市に不良少年団が出来た。彼等は父兄監督者の眼を潜って会合協議の上、活動写真式の団体を組織することとし、秘密契約を結び、左の腕を切って血を啜り合い、兄弟の義を固め、兇器等を懐にして活動館の付近に潜伏出没し、誘惑脅迫等の手段を以て良家の子女を窘《くる》しめた。これは東京の震災後、九州方面に流れ込んだ避難民の中に不良少年が居て、こんな事を始めさせたものと考えられるが、貴方の意見如何云々。
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 この質問書を内務省からまわされた警視庁では
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