が、大方矢張り探偵小説や活動写真の影響であろう。
 一例を挙げると、女学校の廊下にかかった先生の帽子に文《ふみ》を挟んで、女学生に取らした私立専門学校の生徒が居る。
 その生徒は、約束の時間に普通の紳士の服装《なり》をして、課業中の人の居ない廊下に這入った。帽子を探すふりをして、右から何番目かの茶の中折れに文を入れた。
 放課後までその帽子に手を触れる者は無い筈と、安心して帰ったら、豈計《あにはか》らんや、その帽子の先生が急用で自宅に帰ると、発見して、中の文句まで読んでしまった。そのまま封を直して帽子に入れて、急いで学校に行って、旧《もと》の処にかけておいて、放課後調べて見ると無くなっていた。
 その翌る日、その先生は又|旧《もと》の処に自分の帽子を掛けて、今度は見張りをつけておいたら、昨日《きのう》の男学生が返事を受け取りに来たから直ぐに取って押えた。何とか彼《か》とか弁解をする奴を相手の女学生と突合わせると、流石《さすが》に両方共一度に屁古垂《へこた》れてしまった。そこで厳重に将来を戒めて家庭に引渡した。
「活動の影響だ。人を馬鹿にしている」
 と、その先生は素敵に憤慨して記者にこ
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