る。そのほか、公園の暗《やみ》、郊外の夜の木立ちをさまよい蠢《うごめ》く、うら若い魂と魂のささやきは数限りもない。行きずりの人も怪しまぬ。
夥しい会合、催し、年中行事
泰平が続くせいか、いろんな芸術的の催しが盛になった。家庭的、個人的、小団体的といろいろある。
東京はその流行の中心地である。
子供のために舞台を作った富豪がある。アトリエを持っている中学生がある。活動写真機を持っている家も多い。ピアノの無い小学校が稀であると同時に、中流以上の家庭で蓄音機の無い処は些《すく》ない方であろう。レコードなんぞは縁日で売っている。
こんな調子だから「催し」も夥しい。やれ野外劇、それレコードコンサート、又は新舞踊、芸術写真、その他在来の趣味や、新しい道楽の会、切手、書物、絵葉書、ポスター、レコード等の交換会、奥様やお嬢様御自身のおすしやおでんの会、坊ちゃまお嬢様のオモチャの取かえっこの会なぞと、大人のため、子供のため、男のため、女のためとお為づくしである。マージャンの会は今が盛りである。ラジオの会はこれからであろう。
年中行事の多い事も東京が一番である。
三大節、歌留多《
前へ
次へ
全263ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング