市は恐ろしい形相になった。頭の毛を掻き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》りながら床の上に坐り込んだ。
もう何もかも白状します……
こいつは叔父でも何でもありません……
贋《に》せ金使いです……
僕を手先に使って……
ああ許して下さい……
万平は眼を伏せて冷やかに笑った。智恵子の顔を見ながら一礼した。
どうも失礼ばかり……
では取引は又その中《うち》に……
今日はこれで……
智恵子と母は恐れ戦《おのの》きつつ礼を返した。
万平の憲作は悠然と外に出た。
徳市は飛び上ってあとを閉めた。
憲作は表に出るとあたりを見まわした。怪しい人影をそこここに認めた。急いで家《うち》の中へ引返そうとした。扉は固く締まって開《あ》かなかった。
数名の警官が憲作を取り巻いた。
憲作は短銃《ピストル》を揚げて睨みまわした。
警官の一人が同様に拳銃を揚げた。
徳市は扉を急に開いた。
憲作はうしろによろめいた。短銃《ピストル》は空《くう》を撃った。警官の弾丸《たま》に撃たれて入口へ倒れ込んだ。
徳市はうしろから憲作を抱き止めた。
警官が駈け寄
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