…。
たった五ツと云う勿れ。これ等の一つでも大人国の重箱の何千層倍あろうか。学理と実際……鉄とセメントの化け物然として、吾が国の建築界空前の盛観を作るかのように見えた。
これを見て憤慨したのは日本の「地震|鯰《なまず》」であった。
「ヤンキーがヤンキーなら、ジャップもジャップだ。学問だの数学だのと、あとから出来たものにばかり驚いて、弄戯化《ふざけ》た真似をしやがる。百年前に生れた奴は一匹も居ないと見える。憚《はばか》りながら日本の地震鯰様は昔から無学文盲で押して来た人だ。文明や最新式位に驚く人じゃねえ。畜生、見やがれ……」
と云ったかどうか。
これも腕に撚《より》をかけた向う鉢巻という奴で、そこいらを一ツゆすぶった。
東京会館は腰を抜かした。
丸ビルは全癒三ヶ年の重傷を受けた。そのほかのも、腰から向う脛《ずね》のあたりに半死半生の大傷を受けて、往来から中の方がのぞかれるという始末。内外ビルなんぞは、最初の一ユレで八階から地下室までブチ抜けて、数百の生霊をタタキ潰すというウロタエ方であった。
そのみじめな残骸を見てまわると、吾が日本の「地震鯰」も嘸《さぞ》かし溜飲が下ったろ
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