して青白く、つめたく、浅い光りを放ちつつ、東京市中をさまようているのである。そうして田舎者を魘《おび》えさしているのである。
流石の大地震も大火事も、彼等の自覚的無自覚を呼びさます事が出来なかったらしい。彼等は永久に彼等の墓原……都大路をさまようのであろう。
しかし彼等智識階級ばかりが江戸ッ子ではない。まだほかにいろんなのが控えている。
まっ先に飛出して来るのは熊公八公の一派で、記者が最も敬愛する連中である。記者みたいな田舎者を見ると、
「てめえ達あ、しるめえが……」
と来るから無性に嬉しくなる。
屋台店なぞをのぞくと、
「おめい、どこだい。フン九州か……感心に喰い方を知っているな。どうだい、一《ひと》ツ、コハダの上等の処を握ってやろうか。何も話の種だ。喰ってきねえ、ハハハ」
という大道|傍《ばた》の親切が身に沁みて忘れられぬ。
智識階級の連中はどうでもいいとしても、そんな連中は震災後どうしたか。いくらか昔の俤《おもかげ》を回復したか知らんと、見に行って見た。
智識階級は主として山の手や郊外に居るが、彼等は大抵下町に居る。先ず神田辺から相生町、深川の木場、日本橋の裏通り
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