いと思う位に彼等は頭がいいのだ。却《かえっ》て手を合わせている田舎者を腹の底で笑っているのだ。
 しかし見たまえ!
 日本民族が滅亡する時、最後まで踏み止まって闘うものは江戸ッ子じゃないよ。無論、主義者でもなければ、憲法学者でもない。二重橋前の玉石砂利にオデコを埋めて涙を流す赤ゲット連だよ。彼等の無知の底には、切っても切れぬ民族的自覚が流れているのだ。
 彼等は先祖代々、本能的に天朝様を拝み、太陽に手を合わせ、親孝行を知り、老人を尊敬し、子供を愛し、土をなつかしみ、倹約をして天然に安んずるのだ。しかも彼等は自分でもそれを知らない。その自然さと底強さが日本の文化を今日まで背負って来たのだ。この民族の文化的使命を人類世界に発揮する根本動力が彼等赤|毛布《ゲット》の群なのだ……。
 ほかの連中はイザとなると逃げ失せる亡国の民だよ。わけても江戸ッ子はそうなのだ。彼等みたいな田舎者を軽蔑するものが殖えればふえるほど、日本は滅亡に近づくのだ。それを救うためには、おれの所謂《いわゆる》労農尊重主義が必要になって来るのだ……。
 労農とかソビエットとかいうと当局はビクビクしているが、実はこんな土百姓や
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