は、正に大和民族の男性的な性格を最も痛快に代表しているものと云えよう。その大和民族の精華たる江戸ッ子の故郷たる東京の市政が、どうしてこんなに腐敗して行くのか。
 音に名高いあの江戸ッ子の潔癖と義侠心は、こうした東京市政の腐敗堕落を見て何とも感じないのか。天下の旗本を焼豆腐になぞらえた、昔の意気はどこへ行ったか。それは昔の夢物語りで、今の江戸ッ子は切っても赤くなくなったのか。
 東京市政頽廃の裏面にはいろんな原因がかくれているであろうが、堀切前市長管掌はその原因を「選挙民の無自覚」に帰している。
 選挙民の「無自覚」ということは、吾が大和民族が天から授かった美徳で、別段珍らしい言葉ではない。吾国の村会、町会、市会、県会、国会等いう議員が、今日の如く竹篦《しっぺい》下がりに堕落して行く根本的の原因が、国民の政治的智識の欠乏、言葉を換えて云えば愛村、愛町、愛市、愛国心等が薄いのに原因していることは誰でも知っている。仮令《たとえ》普選になっても、美徳がある限り天下はいつまでも太平であろうとは誰でも感じていることで、この美徳を打破って憲政有終の美を満たすには、唯一つ「選挙民の自覚」あるのみという
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