額の金が賭けられているが、取締が非常に困難だそうである。
 次に面白い統計は、東京市内に於ける犯罪者の捕まった場所と、犯罪者の住所である。ここにその最も多い処だけを数字抜きにして掲げると、捕まった場所は亀井戸が最も多く、その次が浅草付近で、その次が外神田から巣鴨という順序である。又犯罪人が住んでいる場所は、第一番が矢張り亀井戸で、その次が南千住、巣鴨、浅草という順で、あとはズッと落ちるが坂本署、四谷署の管轄内といった順序になる。
 このような地名が醜業婦と貧民窟の名所として知られていることは云う迄もない。震災後、浅草やその他の醜業婦を一掃したと誇っている当局の統計に、こうした反証が挙がっているのは実に面白い皮肉な現象である。
 極めて大まかな眼で見ると、東京の北部、吉原と浅草を中心とする一帯の地域は、東京に於ける犯罪者の根拠地といって差支えないであろう。
 東京市中の第三階級の生活はこれ位にして、浅草と活動写真、醜業婦の現況、不良少年少女の研究に移り、この稿を終る事にしたい。



底本:「夢野久作全集2」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年6月22日第1刷発行
※底本の解
前へ 次へ
全191ページ中190ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング