商店の復活は、或る一面から見れば、東京の貴族や富豪、又は中流以上の階級が、震火災の打撃をあまり受けなかった証拠とも云える。殊にそうした階級の連中は、純粋の田舎者と同様に大きな名の通った店から物を買うので、一層この事実を裏書していると云えよう。
上流はこれ位にして中流に移る。
地震|鯰《なまず》と大蔵大臣
「不景気の最もコタエないのは学生で、その次は腰弁だ」という。そう考えられぬ事もない。
腰弁は月給、学生は為替《かわせ》で、いずれもあまり照り降りはないと云える。あるとすれば身から出た錆《さび》か、冬物の質受け、もしくは病気等いう内側から湧いた照り降りである。下層や上層の社会のように、仕事にアブレたり、行き詰まったり、破産したりするような心配は先ずない筈である。
しかし腰弁は、不景気となると、「首」という問題が起る。さもなくともボーナスの減少と来るから、照り降りはなくとも心臓には応える。寧《むし》ろ極度の貧血に陥るものが多いので、結局ノンビリしているのは学生ばかりとなる。
「ジョジョ冗談じゃない。東京はこの頃とても遣りにくくて……」
なぞ云う学生諸君があったらウンと
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