、同じ後藤系の人物を抜きさしするのに、何でこんな芝居を打たなければならぬのであろう。
仮に永田氏が立派な人物で、市会の悪議員が仕事の邪魔になるから追っ払ったものとしても、又は永田氏がケチな人物で、今までに儲けるだけ儲けたから、いい潮時と逃げを打った芝居だとしても、或は又すべての魂胆の策源地を後藤新平側だとしても、どっちにしてもわけのわからないところが出来て来る。
それかといって、全然芝居でない白真剣《しらしんけん》の立ち廻りだとしたら、いよいよ奇妙奇天烈で、狐や狸や貉《むじな》の類が乗せっこのバカシックラをしているのを、遠くから見ているようなわけになってしまう。
これを要するに、記者がこれまで一生懸命に説明したことは、トドのつまり何のことやらわけのわからぬ事を、自分でもわからないままに述べ立てたわけになる。まことに申し訳ない次第であるが、これは決して読者を馬鹿にしているのでもなければ、記者の頭がわるいのでもない。
すべて政界の出来事の表面がトンチンカンに見える時、その裡面に卑怯な真相が横たわっていることは、誰でも感付くことである。
東京市政界の裡面に、何者か知らず大きな卑怯な
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