う迄もなく震災後には特別に繁華になったので、雨天の時なぞ、こんな自動車が警察|除《よ》け(これは自動車のタイヤの横に警察の命令で取り付けたハネ押えの異名で、何の役にも立たぬが多いから、運転手仲間でこう名付けている)をふりまわしながら、電車と一所《いっしょ》に泥煙を揚げて群衆に突貫して行く光景は、壮観? というも愚かである。
こんな風だから、辻々に立っている交通巡査や電車の旗振りでも、生やさしい事ではつとまらない。見る間に電車や自動車が畳み重なって、盛にベルや笛を鳴らして催促をする有り様は、見たばかりでも神経衰弱の種である。
ちょっと余談であるが、この交通巡査の身ぶりを見ていると、なかなか面白いものである。電車の旗振りの方は旗でさしまねくのだから、あまり眼には立たぬが、交通巡査は大抵白い手袋をはめて、手ぶらで交通を支配するのだから、その身体《からだ》付きや手よう[#「よう」に傍点]、眼よう[#「よう」に傍点]に自然と個性があらわれていて、小学生なぞが遠くから真似しているのをよく見受ける。
「ホラ、お出《いで》お出だ。今度はフラフラダンス。失敬失敬。体操だ体操だ。オイチニオイチニ。又か
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