見える。
外神田の河岸近くの一帯は、あの大火に不思議に焼け残ったのであるが、その黒い土蔵や、昔風の瓦葺《かわらぶ》きの屋根、寂《さ》びた白壁などが並んだ落ち付いた町並みと、柳原あたりの(この辺は昔もあまり立派な町並みではなかったが)バラックを見比べると、坐《そぞ》ろに今昔の感に打たれざるを得ない。
一年後の死骸臭
上野に近付くと、バラックの趣が又違って来る。銀座あたりのソレがどことなく気取って、勿体ぶっているのに反して、無暗《むやみ》に大きな看板や、家に不似合な強烈な電燈を並べた店が、広小路を中心に高く低く並んで安ッポイ派手な気分を見せている。これは処柄《ところがら》から止むを得ないであろう。尤《もっと》もそのウラには、寧ろ貧民窟に近い長屋式の家が、ゴチャゴチャしている事が表通りから見える。
ここから電車通りを菊屋橋伝通院の方へ、平凡なバラック気分を通り抜けると浅草へ来る。
ここへ来ると又ガラリとバラック振りが違って、内容も外飾りも只派手一方になる。真に五色五彩、眼も眩《くら》むばかりで、何の事はない、児童の絵本の中を行くような気がする。正にバラックの「安ッポサ」
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