私をつれて、地の下の窖《あなぐら》に連れて行って、口の繃帯を解いてやりまして、私の口に手を当《あて》ていろいろ物の云い方を教えてくれましたので、私は十歳ばかりの時にはもう立派にお話が出来るようになっていました」
「ほんとにお母様は教えることがお上手なのですね」
「けれどもある日の事、とうとう私のオシャベリのお稽古が父の王に見つけられてしまいました。父の王が狩に行きますと、いつも七日位帰って来ませんのに、或る時あんまり鳥や獣《けもの》が沢山に獲れまして家来が持ち切れぬようになりましたので、三日目に帰って来ました。ところが母の妃も私もおりませんので、方々を探しますと、窖の中でお話をしている母の妃と私とを見つけました」
「まあ、大変……」
「父の王は大変に母の妃を叱りまして、すぐに私を殺そうとしました」
「まあ、こわいお父様ですこと」
「けれどもその時、私の母の妃は一生懸命で私を庇《かば》いまして、やっと私の命を助けてもらいました。その代り私を一生涯この塔の上に上げて、番人の代りに大きな蜘蛛に網を張らせて、入り口を守らせることにしました。そうして毎晩一度|宛《ずつ》、たべ物と水とを蜘蛛の網の
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