からだ》はやがて落下傘《パラシュート》のおかげでフンワリと空中に浮かみました。それと一所に烈しく吹く風につれて、大空高く高く高く舞い上りましたが、その中《うち》に雨がバラバラと降り出しました。
そうすると又大変です。落下傘《パラシュート》は紙で作ってあった物とみえまして、見る見るうちにバラバラに破れてしまいましたからたまりません。
二人は抱き合ったまま流星のように早く、下界《した》の方へ落ちて行きました。
「アレッ。助けて」
と姫は思わず大きな声で叫びましたが、その自分の声に驚いて眼をさましますと、どうでしょう。今までのはスッカリ夢で、姫はやっぱり自分のお城の石の牢屋の中に寝ているのでした。
姫はどちらが夢だかわからなくなってしまいました。
あんまりの不思議さに、立ち上って石の牢屋の四方を撫でまわしてみましたが、四方はつめたい石で穴も何もありません。上の方へ手をやってみますと、天井もすぐ手のとどくところにありましたが、そこにも抜け出られるようなところが一つもありません。
あんまりの奇妙さに、姫はボンヤリして、石の床の上に坐わっていました。
すると間もなく向うにあかりがさして、お父様の王様と二人の兵隊が見えまして、牢屋の入り口を外から開かれました。
お父様は思いがけなくニコニコしながら、こう云われました。
「これ、オシャベリ姫。お前の夢は本当になったぞ。今までお前があんまりオシャベリなために誰も婿に来る人が無かったのに、きょう不意に隣の国の第三番目のムクチ王子様が、お前の婿になりたいと云ってお出でになった。今からお引き合わせをするのじゃから早く来い」
と云ううちに、姫を牢屋から引き出して、お城へ帰られるとすぐに、二人のお付の女中に姫を立派にお化粧させるように申しつけられました。
二人の女中は姫の無事な姿を見ると、嬉し涙をこぼしながらお化粧のお手伝いをしました。そうして両方から姫の手を引きながら御両親の王様とお妃様の前に連れて行きました。
姫は狐に抓《つま》まれたようになって手を引かれて来ましたが、父の王と母の妃の前にいるムクチ王子の姿を見ると思わず、
「アレッ。あなたはあの王子様」
と叫びました。ムクチ王子の姿はもう些《すこ》し前夢に見た、あのクチナシ国の王子にすこしも違わなかったのです。
ムクチ王子も姫を見るとニッコリと笑われました。そうし
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