の雲雀や蛙の口のように、もっとやっぱりあたしよりもずっとひどいオシャベリがいて、あたしをシャベリ負かしていじめるに違いない。そうしてオシャベリさえしなければきっと親切にしてもらえるに違いない」
 とこう思いながら、オシャベリ姫は蔦葛にすがって崖を降りはじめました。
 初めのうちは崖がデコボコしているので、オシャベリ姫はちょうど段々を降りるようにして蔦葛にすがりながら降りてゆきましたが、だんだん下の方になりますと崖が急になって、しまいには全く宙にブラ下ってしまいました。姫はこわくなって引返そうとしましたが、もう引返す力が抜けてしまいまして、姫はあまりの恐ろしさに蔦葛にすがりながら泣き出しました。
 その声をききつけたものか、はるか崖の下の草原《くさはら》へ大勢の人が出て姫の姿を見上げていましたが、崖があんまり高いので、そんな人たちがまるで蟻のように見えました。
 これを見ると姫は一層恐ろしくなって、手と足で蔓《つる》にかじり付いてブルブルふるえていますと、その中《うち》にはるか下の方から姫の掴まっていた蔦葛を伝って昇って来るものがあります。だんだん近づいて見ますと、それは黒い服にズボンを穿《は》いて、白い靴に赤い覆面をした奇妙な人間でしたが、さも軽そうに姫を引っ抱えますと、胴のところへ何やら小さな包みの紐みたようなものをくくりつけますと、いきなり姫の身体《からだ》を投げ落しました。
 オシャベリ姫は肝を潰して、思わず、
「アレッ」
 と叫びましたが、間もなくポカーアンと大きな音がしたと思うと、姫の頭の上で大きな傘《パラシュート》が開いて、折から吹く風につれて、向うに見えるお城の方へフワリフワリと飛んで行きました。
 姫は又ビックリしましたが、それでも命が助かったのでホッと安心をしました。
「まあ、今の人は何て不思議な人でしょう。初めからそう云ってくれれば、こんなにビックリしはしないのに。おしまいまでちっとも口を利かないなんて変な人だこと……」
 と独り言を云っているうちに、風船は鉄のお城の中の広いお庭のまん中へフワリと落ちました。
 姫はほんとうに安心をして、そこに敷いてある白い砂の上に降りましたが、風船はそのまま小さく畳んでポケットに仕舞《しま》っておきました。
 そのうちに姫のまわりには鉄のお城の鉄の鎧《よろい》を着た兵隊さんが沢山に集まりましたが、不思議にも一人
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