水戸に相談をかけた。
「うむ、ジム・ホーテンスの説に傾聴するんだな」
 さっきから水戸は、巖陰《いわかげ》からオルタの町の方を見下ろしていたが、振り向いてドレゴの顔を見ながら、そういった。
「ジム・ホーテンスって、アメリカのCPの記者のことか。あの背の高いそして口から煙草を放したことのない……」
「そうだ、あの寡黙《かもく》な仙人のことだ。彼は見かけによらず、よく物を見通しているよ」
「水戸。君はホーテンスと話をしたんだな」
「うん。僕はどういうわけか、ホーテンスから話かけられてね、かなり深く本事件について意見を交換したんだが……」
「で、結論はどうだというんだ」
 ドレゴは、せきこんで聞いた。
「……ホーテンスは、さすがに烱眼《けいがん》で、いい狙いをつけているよ。彼は、燃えるソ連船ゼムリヤ号の焔の中に飛びこむ代りに、七つの海の中からその前日までのゼムリヤ号の消息を拾いあげようと努力している」
「あのゼムリヤ号はソ連船かい」
「そうだ」
「なるほど、僕はそういう大切なことを調べないでいたわけだ。そしてホーテンスは、ゼムリヤ号について目的を達したかね」
「残念ながら、今朝までのところは
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