感じて、はっと目をあいた。
「あっ!」
 彼は思わず愕きの叫び声をあげた。信じられない位の意外な光景が、転がっている彼のすぐ上に展開しているのだった。そこには幅の広い大きな飾窓のようなものがあって、内部は舞台のように明るく照明されていた。そして複雑な器械類は、いまだかつて実物はおろか写真によっても見たことのない奇形な形をしているものばかりで、何に使うものやらさっぱり分りかねた。
(一体ここはどこだろうか。あの明るい部屋は何だろうか)
 彼は自分が海底に寝転っていることを再認した。これはあまり時間を費《ついや》さなかった。しかしその明るい部屋が何処であるかについてはすこしも心当たりがなかった。
(待てよ。前方に沈没した船のようなものが海底に横たわっているという話だったが、その沈没船かしら。いや、沈没船がこんな明るい部屋を持っているわけはなかろう)
 彼は自分の頭脳が機能を半分も失っているような気がして残念でならなかったが、ようやく気がついたことは、前方の海底に横たわっているといわれたのは実は沈没船ではなく、なんだか訳は分らぬながら、それは今頭上に見えている明るい部屋を持ったものであること
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