も知れぬ扁平な魚の群が、無遠慮に前方を横ぎり、そしていずれへともなく姿を消す。
 昆布の林を一つ、ようようにして通抜け、ひろびろとした台地のようなところへ出た。ワーナー博士は、さっと手をあげ、合図の笛を吹いて一同に「停れ」の号令をかけた。
 そこで底へ下りて最初の測定が始まった、器械や装置が並べられる、特別の照明が行われる、ワーナー博士がプリズム式の屈折鏡で計器の針の動きを覗《のぞ》き込む。
 ホーテンス記者と水戸記者は、その計器を覗き込もうとしたが窮屈な潜水服をつけているので、それは見えなかった。
「ワーナー博士、海底地震はやっぱり起こっていますか」
 とホーテンスが尋ねた[#「尋ねた」は底本では「訪ねた」、58−下段−11]。
「さっき一回感じたが、計器をここへ据付けてからはまだ一度も起こらないね」
 そういっているとき、博士は急に身体を強《こわ》ばらせた。そして手をあげて助手を呼び寄せた。五分ばかり経った後、博士は元のゆるやかな姿勢に戻った。
「どうしました、ワーナー博士」
 ホーテンスが声をかけた。
「おお、今しがた待望の海底地震があったよ、その波形を初めて正確に見ることが出来
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