航空禁止を報道すると共に、アメリカ空軍が空中よりテレビジョン送影機の投下を行いつつあり、それは相当の効果をあげている旨を伝えた。それに続いて、そのテレビジョンが新聞写真とニュース映画とによって、世界の人々の目にうつるようになった。しかしそのテレビジョンをそのまま受信して公開することだけは禁止されていた。
 今や大西洋海底に怪人集団が蟠居していることは世界の隅々まで知れ亙った。そしてそれに対抗する手段が活発に議論せられるに至った。小田原評定をつづけていた世界連合の臨時緊急会議も漸《ようや》く肚《はら》が決まったらしく、テレビジョン偵察の快挙を支持し、なおこれが更に積極的なる平和的解決に利用されるようにアメリカ当局に対して要請するところがあった。ところが世界連合としては、これまで一向適切な具体的な平和手段を採択することが出来ず、世界各地から非難を浴びつづけであったため、遂に思い切って、その具体案を広く全世界から募集する旨を発表した。すなわちその募集文の一節に、
“――この際最も必要とするところは、如何なる方法により、かの怪人たちとわれわれとが意志の疎通を図ることが出来るかという問題にある。この問題が解決しないかぎり、われわれが如何に平和的解決を望んでいたところで、その目的は達せられないのだ。有能なる世界の人士たちよ。至急知力を働かして、この問題について適切なるアイデアを本連盟へ提供せられんことを。われら地球人類の安危は、一にこの問題の解決如何に懸っているのである。云々”
 というような文句があるのを見ても知られる。
 この対怪人意志疎通法の募集は、世界始まって以来の莫大なる懸賞付で行われた。その一等には、地中海にある一孤島に広大豪華なる文化施設を施し、交通通信設備を完備し、向う百年に亙っての孤島経営生活費を提供し、その孤島は永世中立として他より侵犯せらるることなきを保証するというのであった。
 このすばらしい懸賞は、世界中の人々をわくわくさせた。そしてその効果は大いにあって、世界連合の会議には毎日応募者の手紙が山のように積まれた。
 だが、やっぱり探し求めている適切なる意志疎通法はどの手紙からも発見されなかった。あらゆる単語を一々美しい絵入りで説明したものをまず送っておけという説もあった。喜怒哀楽とか、平常よく繰返される行為を、トーキー映画におさめて送りつけてはという説
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