「おかしいねえ、あかりがいつもついているんだが、今日は消えていらあ」
「そうだ、暗くて分りゃしない。あかりを早くおつけよ」
「どこだったかなあ、電池のあるところは……」
 五助は奥の方へいって、手さぐりでそこらをなでまわしていたが、とつぜんおどろきの声をあげた。
「ああ、たいへんだ。電池がひっくりかえっている。……おや、いつの間に掘ったんだろう。穴の奥が深くなっているぞ」
 と、そのときである。どこからともなく、ごうッという音が聞え始めた。すると雪穴の外にいた彦太がとびこんできた。
「五助ちゃん。早く外へ出ないとあぶない。雪崩《なだれ》がやって来たぞ」
「えっ、雪崩。それはたいへんだ」
「早く、早く……」
 二少年はころがるようにして雪穴の外へ出た。ぱらぱらと、雪のつぶてが降って来た。
「向こうへ逃げよう。彦くん、早く……」
 五助は先に立って、反対の山の斜面へ、兎のようにかけのぼっていった。
 二少年の背後に、すさまじい響《ひびき》が起ったが、それをふりかえる余裕もなく、二人はなおも一生けんめいに斜面をはいのぼった。息が切れる。心臓が破裂しそうだ。
 響が小さくなったとき、二少年は始
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