めてくださいと頼んだ。役僧は事もなげに、よろしうございますと云つた。
 それからしばらく小箱の眞珠のことが私の意識から離れなかつた。それには一つの恐ろしい想像が交つてゐた。その想像は床から拾ひ集める時に生じたものであつたか、後になつて思ひ出す時に生じたものであつたか、それさへも今ははつきりしない。ただ想像が想像ですんだから、私はそれを詩的に娯むことができるのである。
[#地から2字上げ]―昭和八年五月―



底本:「草衣集」相模書房
   1938(昭和13)年6月13日発行
入力:門田裕志
校正:小林繁雄
2006年9月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全4ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング