、車でパリからの歸途、昨夜遲くボルドーに入つたのだけれども、ホテルがどこもいつぱいで車の中で夜を明かしたといふことだつた。私たちは下の食堂でいつしよに朝食をして、誘はれるまま、その車で鹿島丸を訪問することになつた。公使は船長F氏を知つてるので久しぶりで逢ひに行つたのである。
 ボルドー橋を渡り、河の右岸に沿つて二十分も車を駈けらすと、バッサン・アヴァルに着いた。鹿島丸はポスト第二號に横づけになつてゐた。船腹に日の丸が描いてある。戰爭區域を航行するので中立國の旗幟を鮮明にしようといふ表示である、梯子の下にはフランスの警官が二人武裝して立つてゐた。甲板にはもう乘り込んで散歩してる人たちがあつた。知つてる誰彼の顏も見えた。船客は昨日から乘せることになつてゐた。しかし、まだ出帆の日が發表されてなかつたので、大部分の人は乘つてなかつた。
 私たちは船長室でしばらく話し、晝飯の馳走に預り、今度は船長を誘つて船を出て、またボルドーの町へ引つ返し、サン・ミシェルの寺と、塔と、塔の下に隱されてある七十體のミイラを(これは私の案内で)見物し、それから郊外に出て、シャトー・ブリオンといふ見事な葡萄畠を(これ
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