人、その他近東アジア人。これ等は先祖を忘れてアラビア語を母語としてるが、それでも言葉の習得に達者で、近代ヨーロッパ語をよく話し、店員として重宝がられ、領事館などにも使用されてる者が多く、しかし政治的・社会的には非力である。次に(七)アルメニア人がある。ユダヤ人と共に金儲けにかけては抜群の素質を持つ種族で、語学の方面でもすぐれた才能を示し、貴金属・宝石類を取扱って資産を作り出す者も少くないということである。次には(八)ユダヤ人。その数は少いが天成の素質を利用してエジプト財界の中心力となっているという。
 次に蕃人の系統に属するものとしては(九)ヌビア人がある。エジプトでバラーブラといわれるのはヌビア人のことで、ニル上流地方に多く住んでいる。昔からエジプト人と反《そり》が合わないで、今日でもエジプト人(フェラヒン)との間では婚姻が行われないそうだ。アスアン付近に行くと殊に多くのヌビア人が見られるが、皮膚の黒さは煤で塗られたようである。耕作が嫌いで、家僕となるように出来て居り、その方面では正直で潔癖で使用者に喜ばれる。カイロのホテルや料理店《レストラン》には到る所に彼等が白の寛衣に赤帯を締め
前へ 次へ
全30ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング