ティ・ムッソリーニ、モンティ・ヴィットーリオ・エマヌエーレの名前が付いてるそうだ。
 エトナには熔岩流が大小約二百あると聞いたが、私たちもその内の幾つかを横断した。熔岩流については浅間の鬼の押出を知ってるから特に珍らしくは感じなかったが、北へ東へと数多く流れているのには驚いた。通り過ぎた熔岩流を越して、遙かの下の方に小さい山々が青く重なり、その向うに美しい海が横たわってるのを見下すようになるまでには、幾つも森林地帯を通ったり、牧場を通ったりした。森林には濶葉樹の大木が多く、牧場には羊が群がっていた。道路は幅広く、よく舗装されて、諸所に地名と標高が記されてあった。モンテ・サン・レオ一一八二米、モンテ・リナッツィ一二六二米、モンテ・ソナ一三七二米、等々。
 カパンニ・アツラというカフェ・リストランテの前に最後にバスは停まった。他にも一台バスが来て、部屋の中は遊覧客で一ぱいになった。皆思い思いの皿を注文して、まず腹をこしらえ、食後付近の原を歩いて見た。岩の間に菫やその他の小さい春の花が咲き出て、少し先の小高い所には雪が消え残って居り、真白なエトナの最高峰も手がとどきそうに近く見えた。しかし、
前へ 次へ
全18ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング