顔をしてエトナに登ったともいえないわけだろう。
 それでも登って見なければわからないものをいろいろ見ることができた。前にも言った如く、遠くから眺めると屹立した山のようであるのに、行って見るとまるで広い高原の上を通ってるようで、高山に登っているという感じがしない。それほど根を大きく張った山で、その高原の上を一周するバスが別に走っているが、そのルートは約一一三キロで、八時間を要するそうだ。私たちのはまっすぐに五合目まで登るのに、タオルミーナを朝の九時二十分に出て、目的地に着いたのは殆んど正午であった。登山の順路はカターニアを出発点とするようにできているが、私たちはそれを逆に行って、帰りにカターニアに下りた。
 初めはエトナを一つの大きな土塊として遠く眺めていたが、いつしかそれが二つに分れ、三つに分れて、噴煙の出てるのは向って左の山の向側だということがわかって来た。麓の村々には DUCE NOI と記した大きな標板がところどころで見られた。イタリアの本土では到る所で見たものだが、シチリアでもムッソリーニに対する信頼は行き亘ってるものと見える。エトナの北寄の新らしい噴火口のある二つの山にはモン
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