―一四一
恐らくは彼起き此倒るゝことあらむ。 一四二―一四四
[#改ページ]

   第十四曲

圓《まる》き器《うつは》の中なる水、外《そと》または内《うち》より打たるれば、その波動中心より縁《ふち》にまたは縁より中心に及ぶ 一―三
トムマーゾのたふとき生命《いのち》默《もだ》しゝとき、この事たちまちわが心に浮べり 四―六
こは彼の言《ことば》と彼に續いて物言へるベアトリーチェの言とよりこれに似たる事生じゝによる、淑女曰ふ 七―九
いまひとつの眞理をばこの者求めて根に到らざるをえず、されど聲はもとより未だ思ひによりてさへこれを汝等にいはざるなり 一〇―一二
請《こ》ふ彼に告げよ、汝等靈體を飾る光は、今のごとくとこしへに汝等とともに殘るや否《いな》やを 一三―一五
またもし殘らば、請ふ告げよ、汝等が再び見ゆるにいたる時、その光いかにして汝等の目を害《そこな》はざるをうべきやを。 一六―一八
たとへば輪に舞ふ人々が、悦び増せば、これに促《うなが》され引かれつゝ、相共に聲を高うし、姿に樂しみを現はすごとく 一九―二一
かの二の聖なる圓は、急なるうや/\しき願ひをきゝて、その※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るさまと妙《たへ》なる節《ふし》とに新なる悦びを現はせり 二二―二四
およそ人の天に生きんとて地に死ぬるを悲しむ者は、永劫の雨の爽《さわや》かなるを未だかしこに見ざる者なり 二五―二七
さてかの一と二と三、即ち永遠《とこしへ》に生き、かつとこしへに三と二と一にて治め、限られずして萬物を限り給ふものをば 二八―三〇
かの諸※[#二の字点、1−2−22]の靈いづれも三|度《たび》うたひたり、その妙《たへ》なる調《しらべ》はげにいかなる功徳の報《むくい》となすにも適《ふさ》はしかるべし 三一―三三
我また小き方《かた》の圓の中なる最《いと》神々しき光の中に一の柔かき聲を聞たり、マリアに語れる天使の聲もかくやありけむ 三四―三六
その答ふる所にいふ。天堂の樂しみ續くかぎり、我等の愛光を放ちてかゝる衣をわれらのまはりに現はさむ 三七―三九
その燦《あざや》かさは愛の強さに伴ひ、愛の強さは視力《みるちから》に伴ひ、しかして是またその功徳を超えて受くるところの恩惠《めぐみ》に準ず 四〇―四二
尊くせられ聖《きよ》められし肉再びわれらに着せらるゝ時、われらの身はその悉く備はるによりて、いよ/\めづべき物となるべし 四三―四五
是故に至上の善が我等にめぐむすべての光、われらに神を視るをえしむる光は増さむ 四六―四八
是においてか視力《みるちから》増し、これに燃《もや》さるゝ愛も増し、愛よりいづる光も増さむ 四九―五一
されど炭が焔を出し、しかして白熱をもてこれに勝ちつゝ己が姿をまもるごとく 五二―五四
この耀――今われらを包む――は、たえず地に被《おほ》はるゝ肉よりも、そのあらはるゝさま劣るべし 五五―五七
またかく大いなる光と雖、われらを疲れしむる能はじ、そは肉體の諸※[#二の字点、1−2−22]の機關強くして、我等を悦ばす力あるすべての物に堪《た》ふればなり。 五八―六〇
いと疾《と》くいちはやくかの歌の組二ながらアーメンといひ、死にたる體《からだ》をうるの願ひをあきらかに示すごとくなりき 六一―六三
またこの願ひは恐らくは彼等自らの爲のみならず、父母《ちゝはゝ》その他彼等が未だ不朽の焔とならざる先に愛しゝ者の爲なりしならむ 六四―六六
時に見よ、一樣に燦《あざや》かなる一の光あたりに現はれ、かしこにありし光のかなたにてさながら輝く天涯に似たりき 六七―六九
また日の暮初《くれそ》むる頃、新に天に現はれ出づるものありて、その見ゆるは眞《まこと》か否かわきがたきごとく 七〇―七二
我はかしこに多くの新しき靈ありて、かの二の輪の外《そと》に一の圓を造りゐたるを見きとおぼえぬ 七三―七五
あゝ聖靈の眞《まこと》の閃《きらめき》よ、その不意にしてかつ輝くこといかばかりなりけむ、わが目くらみて堪ふるをえざりき 七六―七八
されどベアトリーチェは、記憶の及ぶあたはざるまでいと美しくかつ微笑《ほゝゑ》みて見えしかば 七九―八一
わが目これより力を受けて再び自ら擧ぐるをえ、我はたゞわが淑女とともにいよいよ尊き救ひに移りゐたるを見たり 八二―八四
わがさらに高く昇れることを定かに知りしは、常よりも紅《あか》くみえし星の、燃ゆる笑ひによりてなりき 八五―八七
我わが心を盡し、萬人《よろづのひと》のひとしく用ゐる言葉にて、この新なる恩惠《めぐみ》に適《ふさ》はしき燔祭《はんさい》を神に獻《さゝ》げ 八八―九〇
しかして供物《くもつ》の火未だわが胸の中に盡きざるさきに、我はこの獻物《さゝげもの》の嘉納《かなふ》せられしことを知りたり 九一―九三
そは
前へ 次へ
全121ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ダンテ アリギエリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング