て汝等驚き異《あやし》まむ 一六―一八
神隨《かんながら》の王國を求むる本然|永劫《えいごふ》の渇《かわき》われらを運び、その速なること殆ど天のめぐるに異ならず 一九―二一
ベアトリーチェは上方《うへ》を、我は彼を見き、しかして矢の弦《つる》を離れ、飛び、止《とゞ》まるばかりの間に 二二―二四
我は奇《くす》しき物ありてわが目をこれに惹《ひ》けるところに着きゐたり、是においてかわが心の作用《はたらき》をすべて知れる淑女 二五―二七
その美しさに劣《おと》らざる悦びを表《あら》はしわが方にむかひていふ。われらを第一の星と合せたまひし神に感謝の心を獻《さゝ》ぐべし。 二八―三〇
日に照らさるゝ金剛石のごとくにて、光れる、濃《こ》き、固き、磨ける雲われらを蔽ふと見えたりき 三一―三三
しかしてこの不朽の眞珠は、あたかも水の分れずして光線を受け入るゝごとく、我等を己の内に入れたり 三四―三六
一の量のいかにして他の量を容《い》れたりし――體、體の中に入らばこの事なきをえざるなり――やは人知り難し、されば我もし 三七―
肉體なりしならんには、神入相結ぶ次第を顯はすかの至聖者を見んとの願ひ、愈※[#二の字点、1−2−22]強くわれらを燃《もや》さゞるをえず ―四二
信仰に由《よ》りて我等が認むる所の物もかしこにては知らるべし、但し證《あかし》せらるゝに非《あら》ず、人の信ずる第一の眞理の如くこの物|自《おのづ》から明らかならむ 四三―四五
我答ふらく。わが淑女よ、我は人間世界より我を移したまへる者に、わが眞心《まごゝろ》を盡して感謝す 四六―四八
されど告げよ、この物體にありて、かの下界の人々にカインの物語を爲《な》さしむる多くの黒き斑《ほし》は何ぞや。 四九―五一
彼少しく微笑《ほゝゑ》みて後いふ。官能の鑰《かぎ》の開くをえざる處にて人思ひ誤るとも 五二―五四
げに汝今驚きの矢に刺さるべきにはあらず、諸※[#二の字点、1−2−22]の官能にともなふ理性の翼の短きを汝すでに知ればなり 五五―五七
されど汝自らこれをいかに思ふや、我に告げよ。我。こゝにてわれらにさま/″\に見ゆるものは、思ふに體の粗密に由來す。 五八―六〇
彼。もしよく耳をわが反論に傾けなば、汝は必ず汝の思ひの全く虚僞に陷《おちい》れるを見む 六一―六三
それ第八の天球の汝等に示す光は多し、しかしてこれらはその質と量とにおいて各※[#二の字点、1−2−22]あらはるゝ姿を異にす 六四―六六
もし粗密のみこれが原因《もと》ならば、同じ一の力にてたゞ頒《わか》たれし量を異にしまたはこれを等しうするもの凡《すべ》ての光の中にあらむ 六七―六九
力の異なるは諸※[#二の字点、1−2−22]の形式の原理の相異なるによらざるをえず、然るに汝の説に從へば、これらは一を除くのほか皆亡び失はるにいたる 七〇―七二
さてまた粗なること、汝の尋《たづ》ぬるかの斑點《はんてん》の原因《もと》ならば、この遊星には、その材の全く乏しき處あるか 七三―七五
さらずば一の肉體が脂《あぶら》と肉とを頒《わか》つごとく、この物もまたその書《ふみ》の中に重《かさ》ぬる紙を異にせむ 七六―七八
もし第一の場合なりせば、こは日蝕の時、光の射貫《いぬ》く(他の粗なる物體に引入れらるゝ時の如く)ことによりて明らかならむ 七九―八一
されどこの事なきがゆゑに、殘るは第二の場合のみ、我もしこれを打消すをえば、汝の思ひの誤れること知らるべし 八二―八四
もしこの粗、穿《うが》ち貫《つらぬ》くにいたらずば、必ず一の極限《きはみ》あり、密こゝにこれを阻《はゞ》みてそのさらに進むをゆるさじ 八五―八七
しかしてかしこより日の光の反映《てりかへ》すこと、鉛を後方《うしろ》にかくす玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]《はり》より色の歸るごとくなるべし 八八―九〇
是においてか汝はいはむ、奧深き方より反映《てりかへ》すがゆゑに、かしこにてはほかの處よりも光暗しと 九一―九三
汝等の學術の流れの源《もと》となる習《ならはし》なる經驗は――汝もしこれに徴せば――この異論より汝を解くべし 九四―九六
汝三の鏡をとりて、その二をば等しく汝より離し、殘る一をさらに離してさきの二の間に見えしめ 九七―九九
さてこれらに對《むか》ひつゝ、汝の後《うしろ》に一の光を置きてこれに三の鏡を照らさせ、その三より汝の方に反映《てりかへ》らせよ 一〇〇―一〇二
さらば汝は、遠き方よりかへる光が、量において及ばざれども、必ず等しくかゞやくを見む 一〇三―一〇五
今や汝の智、あたかも雪の下にある物、暖き光に射られて、はじめの色と冷《つめた》さとを 一〇六―
失ふごとくなりたれば、汝の目にきらめきてみゆるばかりに強き光を我は汝にさとらしむべし ―一一一
それい
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